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概念体

今日も元気にアムかっと!

生きてて良いこと何にもなかった




抗うつ剤を3錠飲んだ

ウツって漢字で言わないのは

見たくないものを隠すためで

きっとそれは逆効果だなって思った

ぽかんと開いた穴は

その果てない昏さを象徴している


良いことなんてなんにもなかった

起きたらふわふわして

夢の中で母さんに叩き起こされた

「最低」って言われたことを覚えている

それだけだった

精神科に電話する声を聞きながら

「なんでもないのになぁ」と思っていた

ブロンを15錠飲むのに比べたら

なんでもないのになぁ

馬鹿みたい


馬鹿になるほど眠くって

なんでもいいやって諦めたことの全部

本当は諦めちゃいけないものばかりで

でもそれもどうでも良くなるくらい

ぼくはただ眠かった

「死にたい」ってずっと

思っていた

どっかのビルから飛び降りて

ぐちゃ って死ねたら

しあわせだなって思っていた


揃えられ 主人の帰り待っている

飛び降りたこと 知らぬ革靴   /鳥居


彼はしあわせだったろうなと

思ったのだ

そしてぼくは眠った

泥のように

何も知らない子のように

幸せだったわたしのように

何も考えないで 眠った

ここは夢だとしきりに呟いていた

母さんも妹も

怒られるようなこともあの教室も

白い錠剤を飲み干したぼくも

リストカットを始めた友人も

全部夢だと 呟いていた


幸せだった


ママが目を覚ましたぼくを見て

「死ぬかと思った」と言った

こわかったからもうやめて

ブロンをたくさん飲むのはいいのかと思った

腕をたくさん切るのはいいのかと思った

「うん」って小さく言ったあと

謝りなさいって声がした

ぼくは

謝ることをひとつも持っていなかった

どうしても「ごめん」なんて言えなかった

ぼくは何か悪いことを

したんだろうか


今もまだ死ぬ場所を考えている

明日になったら世界から消えたら

そんなにしあわせなことは

他にはないって

五年前から思っている

薬をたくさん飲んだときのふわふわは

唯一しあわせな瞬間だから

ぼくはそれだけを見て生きてゆきたい

それだけを

支えにして


いつか 薬漬けのぼくの

死体が地面に転がっていたら

きっとそれを蹴ってください

約束です




ごめんわがまま言うと死んでほしくない





ごめんね